恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》
自分から手放したくせに。
もう、心は後悔で埋め尽くされてる。
こんな弱い自分が嫌になる。
「……勇樹くん……、別れたくないよ…」
今さら呟いても遅いのに。
ベンチを撫でながらポツリと言う。
――「知ってるよ」
………え。
バッと振り返る。
え。え。………嘘。
木の陰から現れた人物。
木漏れ日に眩しそうに目を細めて。
顔は相変わらずの不機嫌さで。
だけど彼の周りはやっぱりキラキラしてる。
抗いようのない、強力なオーラ。
「……勇樹くん」