恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》


「行ってきまぁす」

「行ってきます、おばさん。
朝食、ご馳走さまでした」

二人揃って玄関を出る。

「あらぁ、いいのよ。
また明日もいらっしゃい」

デレッと笑うお母さん。
……その横で、娘もひそかにポーッとして彼を見上げていた。

綺麗な笑顔の彼の魅力は……そう、何て言うか…、正統派、みたいな。

中学生になった頃からだろうか。慶太が周りの女子に騒がれ出したのは。

――『幼馴染みだか何だか知らないけどね。あんた、青山くんに付きまとうのはもうやめなさいよ。
これ以上彼に関わったら後が怖いわよ』

『………』

中学の頃、先輩数人に呼び出されてのお決まりの文句。
まさか、慶太の側にいる事を妨害される日が来るなんて思いもしなかった。

側にいる事に誰かの許可が必要だなんて。
誰よりも長い時間を彼と過ごしてきた、この私が。






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