恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》
『菜緒』。
初めて名前で呼ばれた。
「…はっ…離して。
も、大丈夫……だから」
知られたくない。
こんな気持ち。
司はからかってるだけなのに。
私は一人で揺れたり、ときめいたり。
明日からも何気ない関係でいたいの。
これからも司の笑顔を毎日見たいの。
二人の距離を、変えたくない。
「……離さない。
…さっきの話。やっぱ、うん、って言って」
「え……」
「お前が……気になる。
俺じゃ……ダメか」
そう言って司は腕の力を強めた。
「…そ、そんな…。
佐山さんは……」
「瑞穂とは……別れる。
少し、……待ってくれたら。
もう俺……止まんねぇから…」