恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》


『菜緒』。

初めて名前で呼ばれた。

「…はっ…離して。
も、大丈夫……だから」

知られたくない。
こんな気持ち。

司はからかってるだけなのに。
私は一人で揺れたり、ときめいたり。

明日からも何気ない関係でいたいの。
これからも司の笑顔を毎日見たいの。

二人の距離を、変えたくない。


「……離さない。
…さっきの話。やっぱ、うん、って言って」

「え……」

「お前が……気になる。
俺じゃ……ダメか」

そう言って司は腕の力を強めた。

「…そ、そんな…。
佐山さんは……」

「瑞穂とは……別れる。
少し、……待ってくれたら。

もう俺……止まんねぇから…」





< 5 / 130 >

この作品をシェア

pagetop