恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》


あんな事があったのに高校生になってから、何故か慶太は毎朝私と学校に行くようになった。

中学の間はしばらく口を聞かなかったのに。
彼の心境の変化の理由は分からない。
だけど、口を聞かない間に心に空いた胸の中の大きな穴の理由に気付いてしまった私は、何事もなかったかの様に彼に合わせて再び"幼馴染みの仲良し"を演じている。


「慶太、お母さんをたぶらかすのはやめてよ。
メッロメロになってんじゃん」

「は。何の事だよ」

「自覚なしかよ!
あんな風に笑ったりして。
娘より可愛がってんじゃん」

「へえ。妬いてんの」

「ばっ…!誰が!お母さん相手に妬かないよ!」

「………え。俺はおばさんを俺に取られるのがさみしいのかって聞いてんだよ。

……俺が…誰と何をしても杏里は平気なんだろ」

…………!

「そ、そうよ。
いやだ、私ってば何言ってんだろ」

や、……やばい。
これじゃ私が母親相手にメラメラしてんのがバレバレじゃんか!






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