恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》
「だよな。
大丈夫。杏里が甘えん坊のママッ子だって、誰にも言わないよ」
「そんなんじゃない」
彼はフフッと笑いながら私の頭をクシャクシャと撫でた。
「やめて、乱れる」
「何だよ、さっきまでボサボサだったくせに。
急に格好気にして」
「あんたはいいのよ。
他の人の前ではきちんとしてないと」
「あっそ」
ちょっとむくれた顔をして慶太は歩く速度を速めた。
「ちょっと。置いていかないでよ」
すぐに怒るんだから。
昔から、彼は変わらない。
……変わったのは…私か…。
そう思いながら私は駆け足で彼の後を追った。