恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》
私は呆然としながらも振り返り、教室の入口で向かい合う慶太と実華を見た。
「………?原さん?どしたの」
慶太は前をどかない実華の気迫に不思議そうに頭を傾げる。
「あの。…青山くん」
「………はい?」
……いや。…やめて、実華。
や、私にそんな事を言う資格がないのはもちろん知ってるよ。
だけど、……駄目。
慶太が誰かのものになるなんて。
私以外の女の子と付き合うなんて。
「………あの……」
「原さん、………何?」
きゃー!!駄目駄目駄目!!!
「ちょっと待って!!!」
私は大声で叫ぶと、二人に向かって駆けて行った。