恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》
「杏里…!何だ、お前…、びっくりするだろ……」
すごい勢いで近付いてくる私に慶太が驚いた顔で言う。
「実華、ごめん!
慶太は誰にもあげられないの!!
ずっと昔から私のものなの!!」
「……は?」
……思わず言ってしまっていた。
…………。
クラス中に漂う、沈黙……。
「……杏里?」
「あんたはそのままでいてほしいの!
私の……側で。
これからも!!」
慶太は口をポッカリと開けて私を見ている。
………もう、駄目だ。
おしまいだ、………。
ずっと隠してきたのに。
今のままで過ごせるはずだったのに。
私はただ、慶太の笑顔を見ていたかっただけなのに。
………「……無理だよ、それは」
慶太がポツリと言った。