恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》
「私を……好き?あんたが…?」
「駄目なのかよ」
……う、嘘。
だって慶太は私なんかが隣にいなくても……。
「だって……中学の時…話さなかったじゃない」
彼は俯いたままでボソッと言う。
「……傷付いてたんだよ、あれでも。
平気な顔をするのが精一杯だった」
「……嘘…」
慶太はパッと顔を上げて私の手をグッと掴むと、委員長に向かって声を張り上げた。
「木村。悪い、俺とコイツ、今日はサボリ。
誤魔化しといて」
木村くんはポケッとしたままの顔で
「…おう。了解」と言った。
「行くぞ」
ググッと慶太に引っ張られながら教室を出る。
出がけにチラッと実華を見た。
彼女はニコッと笑いながら小さく手を振った。
"ごめん、本当に、ごめんね"。心の中で強く思った。