恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》
お兄ちゃんはそのまま私の横を横切り、部屋へと向かって歩き出した。
「お遊びはおしまい。
早く宿題、やっちまえよ」
お兄ちゃんが通り過ぎた瞬間に、私の心がふわっと持ち上がる……。
……え。
………心が…彼に、付いて行っちゃった……。
……もう、駄目だよ。
冗談であっても。
私には、通用しないの。
「お兄ちゃん!!」
私はお兄ちゃんに背後から飛び付いた。
「え?!」
ギューッとしがみつく。
「何であんな事、するのよ!
せっかく我慢してたのに!!」
「楓……?」
お兄ちゃんの香りと、ぬくもり。
ずっと、包まれてみたかった。
――妹だなんて…もう、耐えられない。