恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》
「…意地悪だよ…、お兄ちゃん…。
私には…お兄ちゃんしかいないのに…!」
「え……」
ずっとずっと、好きだった。
どうしようもなかった。
いけないんだって分かっていても。
私だけのものに、したかった。
「………っ……」
お兄ちゃんが驚いている。
当たり前だ。私達の間には、相手を好きになってはいけない関係がある。
頭が破裂して、おかしくなってしまいそう。
私達はどうして…兄妹なの?!
「楓…、離して」
「いや!」
「……駄目だ…、離して」
「嫌だよ!好きなの!
好きなのよ!」
――「楓……っ!」
お兄ちゃんが私を抱き締め返してくれる。
「お兄ちゃん……。
………俊哉……」
思わず名前を呟いた。
一度でいいから、呼んでみたかった。