恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》
「………可愛いな…お前は…」
言いながらお兄ちゃんが私の顎をクイッと持ち上げた。
………あ…。
そのまま、私の唇がお兄ちゃんのものと重なった。
「……!」
目を見開いてお兄ちゃんの顔を至近距離で見つめた。
お兄ちゃんの綺麗なその瞳が、一瞬私を見た後、……ゆっくりと閉じられた。
長い睫毛と…柔らかく温かな唇の感触に…私の意識が朦朧としてくる。
ねえ、お兄ちゃん…。
今のこの一瞬が、もう二度と来ないのなら…私はこのまま消えてしまいたいよ。
お兄ちゃんに好かれていると、勘違いしたまま、もう全てを無くしてしまいたい。