恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》


ガクッ。

教室に一人、取り残された私は、よろめいて机に寄りかかった。

ずるい。ずるいよ。
彼女がいるくせに。
突然あんな事を言い出して。

いくら私があんたを好きでも……無理でしょ。

「……っ……」

涙が溢れて、気持ちも…溢れる。

好きだよ。
言えないけれど、ずっと見ていた。

キラキラした目や、筋ばった細い手の甲。
男の子なのに、キメの細かい綺麗な肌。
笑うとクニャッと下がる、目尻。

どんな些細な部分も、全部が魅力的で。
触れたくて堪らなくなる。

あの手に触れてみたい。
その口で好きだと言われてみたい。
手を繋いで街を歩いてみたい。

「……うっ……」
ずっと、願ってきたはずなのに。
臆病な自分に嫌気がさす。




< 7 / 130 >

この作品をシェア

pagetop