恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》
ガクッ。
教室に一人、取り残された私は、よろめいて机に寄りかかった。
ずるい。ずるいよ。
彼女がいるくせに。
突然あんな事を言い出して。
いくら私があんたを好きでも……無理でしょ。
「……っ……」
涙が溢れて、気持ちも…溢れる。
好きだよ。
言えないけれど、ずっと見ていた。
キラキラした目や、筋ばった細い手の甲。
男の子なのに、キメの細かい綺麗な肌。
笑うとクニャッと下がる、目尻。
どんな些細な部分も、全部が魅力的で。
触れたくて堪らなくなる。
あの手に触れてみたい。
その口で好きだと言われてみたい。
手を繋いで街を歩いてみたい。
「……うっ……」
ずっと、願ってきたはずなのに。
臆病な自分に嫌気がさす。