恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》
バッと二人離れたけれど……遅かっ…た…?
階段の中央で抱き合いキスをする子供達を、お母さんはポカンとした顔で見上げていた。
「……あ…あの、……おかあ…」
「いっ、いやだぁ!私ったら!
買い忘れしたわ!
行かないと」
お母さんは私達を見上げたまま、ぎこちなくそう言うと再び外に出ようとした。
「待って!母さん!!」
お兄ちゃんが走ってお母さんを呼び止める。
……や、…どうしよう……。
お母さんに…見られてしまった。
私は震える足にグッと力を入れて、ただ、二人を見ていた。