恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》
うわ!!!なっ!!
俺は両手を青い空に届きそうなくらいに真っ直ぐに上げて、胸にしがみつく海ちゃんの頭の天辺を見下ろした。
ど…………。
どうしたらイイデスカ。
「宇田川くん」
「はっ!はい!」
「………今日のお願い…。
取り消してもいい?」
「え」
………恋人のフリを…やめるって事………?
ま……そうだよな。
もう彼氏の問題は解決したんだ。
続ける意味がない。
「………うん。分かったよ」
ギューッ。
海ちゃんの手の力が強まった。
あれ。離れない。
「……高崎さん?」
「………」
海ちゃんは黙ったまま、俺の身体にしがみついていた。