東條くんのとある1日
PM5:00
その問いに笑うことさえ難しかった。
「ナルシスト!」って言って頭を叩くとか、そんなこと出来なかった。
ただぱたぱたとコンクリートを変色させる自分の涙を視界にいれながら、ぎゅっと手を握った。
重力に任せるようにこくっと深く頷く。
「………、」
東條くんが今どんな顔してるのかわからない。もしかしたら今のは冗談で流さなきゃいけないところだったのかもしれない。
だけどいっぱいいっぱいで。もう私なんて特別扱いしないでいいから、他の女の子のところいってもいいよ。
ここで私がフラれたら、私と東條くんの間にはきっと溝ができる。そしたら東條くんは他の子と恋愛できる。
もう、いいよ。
「なんで泣いてんの」
そう思ったのに。
上から降ってきた声はやたらと意地悪で楽しげな声だった。
ちょっとむっとする。私は本気なのに、そんなに冗談にしか見えないのかな。
顔をあげてきっと睨む。本気なんだよ。本気で好きなんだ。ちょっとくらい、困ればいい!
「好きだよっ東條くんが!!」
怒声混じりだった自分の声に東條くんは目をまんまるくした。そりゃさっきまで泣いてたから、そうか。
とか思いながらも東條くんをぎろっと睨み付け続行していたら。
「ふっ、」
…、笑ってる………?
耐えきれないと言うように口をおさえて肩を揺らす。え、え。本気なんですけど!!