東條くんのとある1日
そう思うようになったのは、一体いつ頃からだったんだろう。
私が東條くんを好きだと気付いたある日。あの頃にはもう嫌いだった。
彼が呼ぶ【ふくはら】は嫌いだった。彼に名字で呼ばれることがたまらなく嫌いだった。
でも、ある日気がついた。
「福原、なに拗ねてんの」
「べつにー」
「馬鹿。ヤキモチかよ」
「ナルシストめ!」
「ほんとのことだろ」
東條くんは笑いながらぽんぽんと私の頭を2回撫でて自分の席に戻っていった。
家を出るまでは私のことを【菜乃】と柔らかく呼ぶ。その声が好きだから、学校で呼ばれる【福原】は切なくてたまらない。
東條くんなりに気を使ってくれてるのか、私と幼馴染みだなんて知られたくないのか。
なんでそう切り替えるのかわからないけど、私はその切り替わりが寂しくてしょうがないんだと気がついた。