まだ私たちの間につける名前はない。
千尋のこと、小さい頃から知ってる。
どんな人と成りなのかも大体は知っている。
だからこんなにあっさり、単純に。
好きとか思っちゃったんだろうな。
…駄目だ。
忘れなきゃ。
「本当に大丈夫か?」
『……え?あ、ごめん。大丈夫』
顔を上げると怪訝そうな雅弘の顔があって、無理やり笑みを浮かべてグラスを持ち上げる。
『ま、飲みましょうや。かんぱーい』
「…そうだな、はいおつかれー」
乾いていた喉にビールが美味しい。
流れてく液体と一緒に、私に芽生えた千尋への気持ちも流れてしまえ、そう思った。
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