まだ私たちの間につける名前はない。
『久しぶり、千尋。待たせてごめんねー。って言うか遠くなかった?』
飯田千尋、幼稚園からの幼なじみ。
高校からは離れてしまって、久しぶりに再会したのは成人式だった。
「ん、でも職場から30分位。家からだったら絶対来なかったけど」
『だよねー、来てくれるとは思わなかったし』
「人に会いたかったの。…あれ、雅弘は?」
椎名雅弘、同じく幼稚園からの幼なじみ。私とは実家も近くて悪友。
三人とも、大学進学を機に上京している。
『何それ、病んでんの?雅弘9時過ぎだって、先にお店行っちゃお』
「んー、そうしよっか」
変わったのは外見だけで、声は低いもののおっとりした話し方は昔のまま。
それが嬉しくて、よしよし、と頭を撫でると千尋は何?と首を傾げた。
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