まだ私たちの間につける名前はない。
「よし、じゃ乾杯!」
「お疲れ様ー」
『何であんたが仕切るかなー』
結局追加で来た雅弘の注文を待ち、グラスを合わせた。
泡はすっかり消えてしまったけど、仕事後のビールは美味しい。
「千尋、それ何?」
「梅酒」
「美咲は?」
『生』
「…普通逆じゃね?」
『え、次日本酒が良いって?』
「え、まだはえーから!」
そんなやりとりを見て、懐かしいなーとチビチビとグラスを傾ける千尋はやっぱり可愛い。
『食べれないもの無い?』
「あ、大丈夫。ありがと」
「俺はー…」
『紫キャベツとトマト、大好きだったよね?覚えてるよー』
「…お前ワザとだろ。何だよこの待遇の差!」
わざと雅弘に昔嫌いだった食材を多めにサラダを取り分ける。
『は?相手は千尋だよ?対抗出来る訳が無いでしょ』
「……ごめん、身の程知るわ」
「え、何それ」
苦笑いを浮かべ、またお酒に口をつける。
もう千尋の顔はほんのり紅くて、酔い方まで可愛らしい。
女として、自信無くすなー…
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