まだ私たちの間につける名前はない。
久しぶりに会う私たちに会話は途切れない。
お酒が進むにつれて、酔ったせいか、普段より饒舌になる千尋の姿もあった。
「で?千尋は?彼女」
日本酒を二合ほど空けた後、雅弘が顔を紅くした千尋に尋ねる。
「別れた。7月に」
「へー、何で?」
「色々あって…まあ最終的には穏和に?」
『何、その色々が聞きたいんだけど?』
「…長くなるよ?」
千尋から恋愛の話を聞くのは初めてじゃない。
中学生の時、初めて千尋に好きな人が出来た時も相談に乗ったし、上手く付き合い始めた時は心から祝った。
それが上手く行かなくなって別れた時は一緒に落胆したし、
高校が分かれた後も、たまにメールが来て意見貰える?との恋愛相談の類の問い掛けに真面目に応えていた。
成人式の際の同窓会では当時好きだった大学の先輩にどうアプローチしたら良いか、について延々と話していた気がする。
『今は?』
「んー、頑張ろうかどうか迷ってるとこ」
「好きな人いんの?」
「んー…好きって言うか、気になる」
『へぇ、職場?』
「ううん、職場の先輩の紹介?」
「………って言うかさ」
『…何よ雅弘』
「彼女の意義って何?」
『は?』
話は、折れた。
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