まだ私たちの間につける名前はない。




久しぶりに会う私たちに会話は途切れない。




お酒が進むにつれて、酔ったせいか、普段より饒舌になる千尋の姿もあった。














「で?千尋は?彼女」






日本酒を二合ほど空けた後、雅弘が顔を紅くした千尋に尋ねる。






「別れた。7月に」



「へー、何で?」



「色々あって…まあ最終的には穏和に?」



『何、その色々が聞きたいんだけど?』



「…長くなるよ?」
















千尋から恋愛の話を聞くのは初めてじゃない。




中学生の時、初めて千尋に好きな人が出来た時も相談に乗ったし、上手く付き合い始めた時は心から祝った。




それが上手く行かなくなって別れた時は一緒に落胆したし、




高校が分かれた後も、たまにメールが来て意見貰える?との恋愛相談の類の問い掛けに真面目に応えていた。




成人式の際の同窓会では当時好きだった大学の先輩にどうアプローチしたら良いか、について延々と話していた気がする。















『今は?』



「んー、頑張ろうかどうか迷ってるとこ」



「好きな人いんの?」



「んー…好きって言うか、気になる」



『へぇ、職場?』



「ううん、職場の先輩の紹介?」



「………って言うかさ」



『…何よ雅弘』



「彼女の意義って何?」



『は?』
















話は、折れた。











.
< 9 / 42 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop