衆議院議員◇真実 一路◇




東京発~米原駅行、新幹線ひかりの車内で車窓から流れる景色を眺めながら私は考えていた。


この大きな車体を時速三百キロで走らせる原動力も電気。


我々は、何十年もの間この快適なそして文化的な生活を維持する為に莫大な電気エネルギーを必要として来た。


その莫大なエネルギーを得る為に、国が選択したのが原子力による発電……


そして今、その安全神話はあの震災により脆くも崩れ去ってしまった。


現在、国民の多くは将来的に原発ゼロを目指す意見に賛同しているようではあるが、一方で原発の存続を強く切望する者達がいる事も事実である。


「色々な立場の人間がいますから、難しいですね……」


誰に言うでもなく、独り言のように私の口をついて発せられたその言葉に、向かいの席で幕の内の駅弁を食べていた幹事長が顔を上げた。


「そうだね、人によって違うからね……好きな物を先に食べる派と、後にとっておく派」


「はっ?」


「マナミちゃんは、好きな物は最後にとっておく派かな?」


「ま、まぁ~どちらかと言えば……」


「それじゃあ~そのヒレカツは、別に嫌いだから残している訳じゃないんだね……」


そう呟くと、幹事長は少し残念そうに私の駅弁のおかずを眺めていた。


幹事長……アナタ、他に考える事があるでしょうが……



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