【完】Rose.
………誰か、これでいいのかよくないのか、言ってくんないかな。
今までは、お洒落とは程遠いようなスーツに、後ろで適当に纏めたヘアスタイル。
アクセサリーなんてつけないし、メイクもファンデと眉毛とリップだけ。
…ヒールはボロボロ。
さすがに処分しましたけども。
「…仕方ない。私にはこれが限界。おかしければ笑えばいいわ」
そうそう、無理に背伸びはしない方がいい。
ここまで努力したんだ。
…大半が専務のおかげだけれど。
元が残念だから開き直ってやるわ。
「…っと、いけない」
一番大切な物を忘れるところだった。
これだけは替えろと言われても絶対に外せない物。
そっと大切に、腕時計をはめる。
おばぁちゃんからの就職祝いのプレゼント。
上品に輝く文字盤に、プラチナのベルト。
一目見て高価な物だとわかる。
私の、一生の宝物。
「…やばっ、行かないと!」
最後にお気に入りの香水をふりかけて、…専務から頂いた、Hから始まるカバンを持って。
「…よしっ!頑張れすみれ。…行ってきます!」
気合いを入れて、新しい一日へと駆け出す。