【完】Rose.
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…なんなの、人のことをジロジロと。
家を出てから、駅を出た今も、すれ違う人の視線が向けられているようで、居心地が悪い。
…やっぱり変って?
……悪かったわね。余計なお世話よ。
…あぁぁ、朝からこんな風じゃ、今日一日が思いやられる…。
………ダメよ、すみれ。仕事なんだから。
気を取り直して頑張らないと。
会社の門をくぐる前に、気持ちを切り替えて。
「…よしっ」
玄関ロビーに入って、すれ違う人達に挨拶をしながらエレベーターへと進んで行く。
…んだけど、…目を見開いてこちらを見ている人、二度見する人、固まる人。
…すっごい複雑。
すいませんねぇ、似合ってなくて。
気にしない…、気にしない…。
………さっさとデスクで仕事しろやっ!
そう顔に出しながら、カツカツとヒールを踏み鳴らしてエレベーターへと乗り込んだ。
(はい、その時の皆さんは?)
「…え?あれ、水木課長?」
「やべー、超タイプ」
「あの人あんなに綺麗だったんだー」
「いいなー、細いし、スタイルいいー」
「「「やっぱり格好いー」」」
すみれさんが思っているのに反して、評判は上々。
…人望も、厚いんです。