【完】Rose.


…えー、とかなんとかぬかしてる専務を構う余裕なんて全く無い。


……私本当にこの人といると余裕無くなるんだけど。


一体全体何物なのよ、貴方は。


「はぁ……」


身体から、気が抜けてしまった。


私今からちゃんと仕事出来るんだろうか…。初日なのに。


「…すみれさん、」


…今度はなにが来る。


「今日、とっても素敵です。似合ってますよ」


言い忘れてました。今までの感じも好きですけど。そうサラっと言ってのける、目の前の男。


「………」


サラっと近寄って来たかと思いきや、


「…でも、さっきのぎゃあってのは、傷ついたなあ」


「………」


「…お詫びのしるし、くれますよね?…ということで、ランチは空けておいてくださいね」


そう耳元で囁いて、


さぁ、そろそろ仕事しましょうか。行きますよ〜。


と先へ行く後ろ姿を見送った。


「………ぃーっ!!」


声にならない叫びをあげてやった。


役員室がたくさんある、ロビーで。


天井に向かって。


……けど、声出して叫びてぇえ!!


足はドンドンと踏み鳴らしてしまったけれど、防音みたいだから大丈夫。……多分。……知らないけど。


< 22 / 61 >

この作品をシェア

pagetop