【完】Rose.


そうこうしている内に時計は家を出る時間を指していて、


「…っと、あれ持った、これも持った、…ん?あれどこだ?ん?え?…そこかよ!焦ったっつの!…行ってきます!」


バタン!


早足で駅へ向かいながらいつも思うこと。


…行ってきますって、誰もいないわよーってね。


一人暮らしも長いせいで、独り言は当然。


テレビに話し掛ける毎日。


―あぁ、今時の女子が言う女子力ってやつ、あれ、本当に欲しい。


絶対的に足りなさすぎる。


どうすれば手に入るんだろうか?


エステ?ネイル?習い事?


無理。そんな時間ない。


…他に?…恋愛とか?


…もっと無理だわ。


どれだけご無沙汰してる?


…大学時代に付き合ったきりの記憶しかない。


夢中で仕事に打ち込んだ結果だから、悔やんではいない。


けれど幸せかと問われれば、素直に頷けない。


結婚が女の幸せだ、と思う人間も当然多いから。


28歳、この歳になると周りは次々に結婚して行くわけで。


その度に友人に言われることと言えば、


『すみれは結婚しなくても生きて行けるタイプだから』


そうかい、そうだよ。悪かったな。


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