【完】Rose.
初めて貴女に出会ったのは、桜が満開の季節、暖かな日差しが降り注いでいた、そんな日。
出会ったというより、見つけた。の方が正しいだろうか。
貴女は俺に気づくことなく、日々を駆け抜けていたから。
貴女を見つけたあの日。
大学の中には、真新しいスーツに身を包んだ新入生達が溢れていた。
そして新入生歓迎と書かれたボードを持った、たくさんの生徒が待ち構えていたのを覚えてる。
だから、人で溢れかえっているそんな環境で、貴女を見つけられたのは奇跡だったと思う。
偶然だった、…たまたま、門の方に視線を向けた、その時。
友達や両親と、嬉しそうに門をくぐり抜ける人の波に囲まれながら、涼しげな、少し寂しげな表情を浮かべて歩いている彼女を見つけた。
多分、新入生。
だけど、周りを歩いている新入生とは、明らかに漂わせる雰囲気が違っている。
儚げで美しい。
けれど、強い。
そう思わせる雰囲気。
俺の周りにいた友人も、俺の視線に気づいて騒いでいたのを、覚えている。
入学式を見に行ったのも、もしかして、そんな気持ちがあったから。
だから、新入生代表の挨拶で彼女が壇上へ上がった時、視線は彼女へと釘付けになった。