【完】Rose.


その声、話し方、香り。


『わ、びっくりした』


勢いよく体を起こした俺に驚いて、くしゃりと笑った彼女。


どうしよう。


そんなことを考えて、なかなか話し出せない俺を見て、


『あ、なんかすみません。…ここ、結構な勢いだったから、痛そうって』


思わず話しかけちゃった、そう言って、綺麗な指で、自分の頬を指差す彼女。


『あの、これよかったら使ってください。じゃあ』


水で濡らしたハンカチを渡してくれた彼女。


『……あ、ちょっと!』


『あ、それ、捨ててもらっていいですから』


そうくるりと振り向いたかと思うと、すぐに歩いて行ってしまう。


落ち着け、俺。


色々頭整理したいところだけど、とりあえずは。


『…っ、待って!』


彼女の細い腕を、捕まえて。


『…!』


『…あ、驚かせてごめん。…これ、ありがとう』


なにか、なにか、少しでも引き止める術は無いのか。


キュっと、彼女の腕を掴んだままだった手に、力が入ってしまった。


『…あの、大丈夫ですから。…それより、腕が』


ちょっと痛いかな、そう言う彼女に、


『…!わ!っ、ごめん!』


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