【完】Rose.
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『…本当に、ごめん』
あのあと、痣が出来てしまった彼女の腕を見て、青ざめた俺の顔を見た彼女は、
『…大丈夫です。人より痣になりやすいだけなので、気にしないでください』
そう、平気な顔で言ってくれた。
『……いや、でも』
そう言ってくれても、やっぱり謝っても謝りきれない。
そんな俺を見兼ねたのか、彼女はこう言った。
『……じゃあ、あのハンカチ、やっぱり返してください』
『……へ?』
そう、俺に差し出してくれたあのハンカチで今、冷やされているのは彼女の腕。
『…別に、平気ですから。もう謝らないでください』
困ったように微笑む彼女。
まさか、こんなに近くで、こんな表情を見られるなんて思わなかった。
…てか、考えてみれば、めちゃくちゃ格好悪いところを見られてるんだよな。
『……あの、さ』
『はい?』
『どこから、見てた?』
『……すみません。最初から』
お二人が来られた木の反対側で、本を読んでいたので。そう言う彼女の眉間に少しシワが寄っている。
『…謝るのは、俺だよ。なんかごめん』