【完】Rose.
彼女の時間を邪魔した挙げ句、情けない場面を見せた。その結果がこの状態。
『…本当は、見つからないように消えようと思ったんです』
だけど、とそこで止まる彼女の言葉。
聞きたい、その言葉の続きを。
『…だけど?』
『……ため息をついて、空を見上げる、貴方の顔が、なんだか自分を見ているようで』
勝手なこと言ってすみません。そう気まずそうに俺に頭を下げる彼女。
『付き合うって、なんなんでしょうね。…相手から気持ちをもらって、悪い気はしないし、こちらも、同じくらいとはいかなくても、気持ちを返して。出来る限り誠実に向き合ってるつもりなのに、足りないって言われて』
憂いを帯びたその表情は、息を呑むほど色っぽくて、じっと彼女に魅入ってしまった。
『…それでいつも気づくんです。本当に好きなら、溢れるほど注げるんだって』
ふふ、とまた、淋しそうに笑う。
『…俺は、君みたいに綺麗で誠実な思いは持ってないよ』
だから、いたたまれなくなる。
今の自分では、君には釣り合わない。
『……綺麗、なんかじゃないです。客観的になりすぎるから、…冷たいんですよ、私』