【完】Rose.
『…そういう恋、したんですね』
ずっと、静かに話を聞いていた彼女がそう言った。
『…うん、まぁ』
してるよ。
今、わかったばかりの、遅すぎる初恋。
だけど、言えない。
いや、言わない。
『私も、出来るかなぁ』
『……出来るんじゃない?』
嘘。させない。
俺以外に恋なんて。
『……気長に、焦らず待ってたら?』
あわよくば、俺が次に声をかけるまで、待っていて。
『恋は、無理にするものじゃないし』
必死すぎる自分に失笑。
『…そうですね。』
そうだそうだ。
『それに、自分の気持ちに正直でいいと思う』
だから、気持ちを向けられても、返そうとしなくていい。
返されたら困る。
『…正直に』
『そう。無理して気を使うの、疲れるでしょ』
俺なら気を使わせない。
『うん、…本当にそうだわ』
うんうん、と頷く彼女が可愛くて、少しいたずらしたくなる。
『…うんうん、…!』
頭を撫でて、髪を一房指で撫でて。
『君は君のままで、いればいい』
そんなことを言って。
真っ赤になる彼女に少し叱られた、あの日。