Only You

07 強さの理由

 二人で自分の買ってきた花を愛でられる生活が始まった。
 会社での嫌がらせは続いていたけど、私はそれにビクビクするのをやめた。
 言いたい人には言わせればいい。
 こう強く思えたのは、あの日聞いた曲とエルのおかげだ。

 エルからもらったメールを全部過去からさかのぼって毎日読んでる。
 もちろん綾人が帰宅する前に。

 すっかり忘れていた彼の強いメッセージを色々思い出していた。
 私が落ち込んだとき、彼はいつも「負けないで」って応援してくれていた。
 失敗したって次があるよって。
 明日が来る、明日を健康に迎えられる幸せがあるならきっと君の未来は明るくなる可能性が多大に広がってるんだよって……書いてあった。


 営業のお仕事っていうのは、きっと想像以上にキツイ仕事なのに違いない。
 商品を買ってもらうだけでも大変なのに、クレームがあったり言いがかりまがいの事を言われたりもするみたいだ。
 それが駄目で、早々に辞めてしまう人も多い。

「本当は商品の企画に行きたかったんだけど、どうしても営業に欲しいって言われて」

 綾人は先日そんな裏話をしてくれた。
 彼のビジュアルと話術を考えたら、確かに営業に出したくなる会社側の気持ちも分かった。
 実際彼は相当な成績をおさめている。

 愚痴言ってるところなんか聞いた事が無い綾人。
 いったいどこで彼はストレスを発散させてるんだろうって不思議だった。
 エルのメール内容を見ているとまるで「学生なのかな」って思う時があって、「漫画にはまってます」とか「好きな曲リピートしてると気分いいね」とか「長い本にはまると夜更かししちゃって駄目だ」なんて書いてあった。
 彼は一人で別世界を築いていて、そのお城の中に入れば気分をリフレッシュ させる独自の力があるのかもしれない。
 だから私の悩みを全て受け止めても、まだまだ言っていいよっていう余裕を見せる。
 私に何か出来ないかなって思って、時々言うんだけど綾人はいつも「そのままでいてくれるのが一番!」だけ。
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