Only You
家に帰ってからの自分は、まあ主婦にしたら完璧かなっていう感じだ。
料理も好きだし掃除も好き。
だから自分の手料理を食べてる時が一番落ち着く。
お昼は皆に合わせて定食を頼んだりしてるけど、冷えて固まった豚肉とかはあまり食べたくない。
一人でも美味しいんだから、一緒に食べてくれる人がいたらどんなに嬉しいかなって時々思うけど、それは千年かかっても叶わない気がするから諦めてる。
時々妹から電話が入る。
余計なお世話なのに、私の結婚の心配をしてくる。
今年23の真美はすでに結婚して子供もいる。
二つ年上の私を本気で心配していて、「若いうちが勝負なんだからね!」とかしつこい。
もう若いとかいう年齢もやや厳しくなってきているものの、一応20代っていう事で、私は勝手に自分を若手の部類に入れている。
それでもあと5年したら30歳。
綺麗な人なら30を過ぎたって問題なく相手が見つかると思うけど、私は年齢を重ねるごとに不利になってゆく気がしてしまう。
唯一夢を見ていられるのは会社で笹嶋さんを眺めている時と、メール友達の「エル」という人とメール交換をしている時だ。
エルは住んでる地域すら教えてくれなくて、ほとんどが謎。
多分男性……ぐらいしか分からない。
何だか有名漫画の登場人物から名前をもらったって書いてあった。
全ては謎にしておきたいらしく、自分の環境や年齢などほとんどの情報はもらってない。
ただ、エルの考えている事や思っている事はストレートに表現してくれていて、私はそれを見るだけで本当に心がジンと暖かくなる。
だから私はついエルに自分の本当の悩みを打ち明ける。
エルは私を勝手に「ミサ」って呼んでいて、本当の名前は「遠藤琴美」っていうんだけど、それは私もあえて伏せてある。
彼とメールが始まったのも本当に不思議な縁で。
偶然彼から私宛に“ブログでアドレスみつけたんでメールしてみました”とか書かれていた気がする。
確かに私は好きな花の事なんかをブログで日記みたいにつけていて、そこにメアドも載せていた。
でも、男性があのへぼへぼなお花ブログ見るかなあっていう不思議さはあった。