Only You
「いつまでもこの距離でいてくれる?絶対離れないって言って……」

 めずらしく本当に子供みたいな事を言ってくる綾人。
 ずっと甘えられる家族がいない生活を送ってきて、きっと彼も寂しかったに違いない。
 その気持ちが溢れて止まらないのかもしれない。

「いるよ。綾人が必要だって言ってくれるならいつまでもこうしているよ。私に命を与えてくれたのはあなただもの……。半分自分を放棄してた私に、自信とか愛情とかそういう心の根底に必要なものを少しずつ与えてくれてるのは、あなただよ」

 本当にそう思っていて、私の日常も日々変化している。

 朝、自宅に置いてある数個の植木鉢に水をあげる時、色々声をかけるようになった。

“今日も一日素敵な日だといいね”

“暑過ぎないように日陰つくってあげるね”

“仲間増えた方がいい?寂しくない?”

 前から植物にも心はあるだろうなって思ってたんだけど、綾人と暮らすようになってから、実際に声をかけるようになった。
 すると、気のせいかな……植物の方も声をかけた日の方が、仕事から帰って来て見た時に生き生きしている気がした。

「本当に花が好きなんだね」

 私が水やりを熱心にやっていると、綾人はそれを優しく見ている。
 最初に誘ってくれたガーデニングショー……来年は一緒に絶対行こうねって私は答える。
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