Only You
 綾人も私の体を優しくさすってくれる。

「綺麗な肌だね」

 綾人はそう言いながら最後までつけていたブラも自然に外した。
 大きくもない自分の胸があらわになるのが見えて、思わず顔を背けてしまった。
 本当は顔から火が出るほど恥ずかしいのに、彼に愛おしげに見られるのは嫌だと思わなかった。

「全部可愛い。琴美……綺麗だよ、本当に」
「綾人」

 心の底から信頼して愛している人との体の接触は、口で何十回「愛してる」って言うよりダイレクトに愛情が伝わってきて、それが体中に響きわたった。

「琴美が大切にしている花への水やりも欠かさないし、ベランダ掃除は週1だよね。君が習慣付けている事ちゃんと守るよ。琴美がいつ帰って来てもいいように僕は待ってるよ」

 優しい愛撫を繰り返しながら、綾人はそんな事を言った。
 私の耳にはもう遠く感じられて、その言葉を彼が本当に言ったのかどうかすら判断できなくなっていた。

 お互い、愛しさと寂しさがごちゃまぜになった感覚で抱き合った。
 心の奥底から湧き上がる快感と同時に、本当は1日だって・・・1時間だって離れたくない綾人との別れを意識して、私は何度も涙を溢れさせた。

 私の愛しい人。

 少し距離が離れるぐらいどうって事ないよね。

 ……なんて強がってるけど、本当は行きたくない。
 このまま、綾人と二人きりで暮らしていたい。

 でもそれじゃあ私は仕事から逃げる事になるでしょ?

 エルはそういう生き方を好まないでしょう?
 
 だから私は行くの。
 次に会う時は、きっと愛情が何倍にも膨れ上がっていると思う。
 信じるっていうのは簡単じゃないけど、私にはあなたがくれたたくさんの言葉がある。

 大丈夫。
< 51 / 103 >

この作品をシェア

pagetop