Only You
「……」

 独りきりの部屋でこの短いメールを見るのは、言いようもなく寂しかった。
 本当は電話したかったんだけど、これだけ短いメールなのを見ると、綾人に も余裕が無くて忙しそうなのが伝わってきたから遠慮した。
 その晩も私はエルに宛てて送信しないメールを打った。

“エルへ

困っています。
大好きな人の心が離れてしまう気がしています。
本来は弱虫なのに、綾人に相応しい女になりたくてちょっと無理をしてるのかも。
カッコつけて仙台まで出てきたのに、結局寂しくて一人で泣いたりする夜もあるの。
馬鹿みたいだね。
東京に戻りたい。
仕事を辞めてしまおうかな?
でも長坂さんは私を信頼して仕事をしてくれていて、簡単に彼を裏切って辞めるのも何だか罪悪感があるし……。
どうしようもないです。
一緒に暮らしてた頃はあんなに我がままも言えたし、言葉が必要が無いほどお互いの距離が近かったのに……もう綾人の肌の温もりを思い出せない。
どうしよう……。
私はどうすればいい?

ミサ“

 こんなメールもらってもエルだって困るよね、っていう内容だ。
 成長したつもりだったけど、愛する人との距離が開くのはまた別の次元だった。
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