Only You
 長坂に心が揺れたって言ったか?
 今……。
 こんなに信じて疑いをほとんど表に出さなかったのに、琴美は裏切ってたのか?
 そう思ったら、今まで我慢してきた嫉妬が絶えられない程大きくなった。

「別れたいの?僕と……」

 この言葉に、琴美は泣きながらゆっくり頷いた。
 あり得ない展開だった。
 今晩は改めてプロポーズして、久しぶりに笑顔で過ごせる予定だった。
 なのに、目の前で泣いてる琴美は僕の手を振り払って長坂のところへ行こうとしている。

「長坂と付き合うの?」
「ううん、もう長坂さんにも仕事は仙台で続けられないって伝えたし、正直職場での私の仕事は限界だと思う……だから、一人でやり直そうと思ってる」

 ほとんど表情を変えずに涙だけこぼして琴美はそうつぶやいた。

 僕を裏切った事への罪悪感で、長坂と離れたんだろうか。

 どちらにしても、僕は琴美に振られたのか。

 今の心を言葉に現せと言われても、どうとも言えない。
 琴美の体を強く抱きしめて戻ってこいって言いたいのに、固い表情で立ち尽くす琴美に触れる事すら出来なくなっていた。
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