Only You
「……簡単に僕の心を言うよ。僕は天海さんと一度も何かあった事は無いし、気持ちを揺らした事も無いよ。一度熱を出して倒れた時に部屋まで運んでもらった事があったのは認めるけど、あの時の無言で切れた電話が琴美だったなら……納得するよ。ただでさえ離れて不安になってるのに、天海さんの声を電話で聞いて、仙台でまことしやかに流れる噂を聞いていたら僕の心を疑ってもおかしくない」

 綾人は冷静な声でこれだけの事を一気に話した。
 それで少し間を置いて続けた。

「でね、肝心な僕の心なんだけど……」
「うん」
「ミサと同じ」
「え?」

「琴美と一緒だよ。仙台に行ってしまってから、引き止めなかった事を軽く後悔していて。でも、引き止めたりしたら琴美が前向きに頑張ってる足を引っ張るみたいで我慢した。それが数ヶ月続くうちにどんどん琴美に本心を伝えられなくなって、長坂への嫉妬も重なって……お互いの本心を言いにくい状態にしてしまった。琴美だけが悪いんじゃなくて、これはお互いに素直な心を言えない環境を作ってしまったのが原因だったと思う。僕こそごめん・・・琴美無しでは生きられないって、さっきまで情け無いほど駄目になってたんだ」

 そう言った綾人の言葉は途切れがちになっていて、もしかしたら泣いてるの……って思った。
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