Only You
「とにかく、中に入って」

　まだ玄関で靴も脱がないで立ち尽くしていた私に彼はそう声をかけてくれた。
　中に入ると、テーブルにラップのかかった料理が並んでいた。

「これ……」
「あ、うん。琴美と一緒に食べようと思って作ってあったんだ。もしよければ
　暖め直すから食べない？」
　綾人が私の為にご飯まで用意して待ってくれていたのが分かって、改めて自分が綾人を疑った事を後悔した。

「いつも琴美が美味しいの作ってくれるから、僕のはどうか分からないけど。とりあえず失敗しにくいかなと思ってハンバーグにしてみたよ」

　美味しそうな楕円形の手作りハンバーグをトースターでもう一度温めて、改めて皿に盛り付けて私の座った席に出してくれる。
　ニンジンのオレンジ色がやけに目にまぶしくて、つい目をしばたいてしまった。
　食卓には蛍光灯の白い光よりちょっとオレンジ色していた方が美味しく見えるらしいって綾人は何かで読んだらしくて、ダイニングの部分にだけ別のライトが吊るされている。
　そのせいか、確かにちょっとレストランにいるのと同じ風景を感じた。
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