Only You
「美味しそうだね」
「食べてみて、ソースも結構こだわってみたんだ」
「うん」

 言われるまま、私は綾人の手作りしてくれたハンバーグを食べた。
 一口食べて心が暖かくなって、二口食べて肩の力が抜けて、三口食べる頃には涙が溢れて止まらなくなった。 
 声を殺して泣きながらご飯を食べる姿を見て、綾人は優しく私の肩をさすってくれた。

「良かった。これ、冷えたままどうしようかと思ってたんだ。琴美に食べてもらえて嬉しいよ」
「すごく美味しいよ。綾人の愛情がたくさん詰まってて、極上ソースに感じる」

 綾人に最初に私の手料理をふるまった時も、彼は今の私みたいに喜んでくれていた。
 空腹っていうのもソースになるけど、好きな人と食卓を囲むっていうのも相当な極上ソースだ。
 一人で外食する気持ちになれないのは、寂しいからじゃなくてあまり美味しく感じられないせいだと気がついた。
 高級レストランで食べても、駅前のコーヒーショップでハンバーガーを食べても、一人じゃ味なんか変わらないかもしれない。
 だから、綾人が私の為に手作りしてくれて、一緒に食べるこのハンバーグは高級レストランに劣らない味。


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