Only You
 半分ぐらい食べたところで、私は手を少し止めて綾人を見た。

「どうしたの?」

 不思議そうな顔で綾人は私を見る。

「責めないの?あんなにひどい事言って……それが全部嘘だなんてメールして。こんな勝手な私をどうして怒らないの?」

 そう言ったら、綾人はフッと笑って手元の水を少し飲んだ。

「琴美が僕をまだ必要だって言ってくれてるんだって分かっただけで、僕には十分だったから。もし長坂に多少気持ちを持っていかれていても、琴美さえ僕のところへ戻って来たいって言ってくれるなら受け入れるつもりだった」

「どうして、そんなに大らかになれるの?我慢してる訳じゃないよね?」

 私が心配して彼の顔を覗きこむと、綾人の綺麗な手が頬に触れた。

「琴美は僕にとって絶対必要な人だからだよ。正直、エル宛のメールを全部読んで、あんなに僕を必要としてくれたんだって分かって嬉しかった。どこかで僕は琴美が寂しい、帰りたいって言ってくれるのを待ってたのかもしれない」

「……」
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