COLOR's

おかしい。この病棟は重症患者専門に取り扱っている病棟だと聞いた。
こんなに陽気な患者がいるだろうか。
私はこの病室にきてから明るい声を発する人間を確認できたことが一度たりともなかった。


「何で私の病室にいるの?」
「えっ・・・?えっと・・・新しい患者さんが入ったって聞いたから来てみたんだ」
「ふーん」
「この病棟には僕と話してくれる人はいないし、退屈していたから」
「そうなの」
「詳しいことは言えないんだ、ごめんね」


彼には何かしらの事情があるようだった。
それは私も同じだ。
本来なら私はこの病棟に来るべき症状ではない。私の病棟は症状的に見ても3号棟だった。
なのに、この、まるで隔離された病棟にいる理由はただ一つ。

私が表立って人前には出ることができないから。
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