佳人な先生
「やっぱり
 元気ないね。
 大丈夫?
 この前の何も言わずに
 帰っちゃったから
 心配になっちゃって。」


「すいませんでした。
 あの・・・よく
 覚えてなくて・・・。」



「そっか・・・。
 僕の話しを
 聞いてもらっても
 いいかな?」


「はい・・。」


「僕たちの両親は
 中学のころに
 離婚してね。

 僕たちは
 ひとつ違いの
 兄弟だったんだ。

 それで
 母に引き取られた
 のが兄の冬夜。

 父に引き取られた
 のが僕。

 だから苗字が
 違うんだ。

 僕たち兄弟は
 とても仲がよかったから
 両親が離婚してからも
 よく会っていたんだ。

 自慢の兄だったよ。
 成績優秀でスポーツ万能。
 かっこよくて
 モテていたし・・・
 そしてとても
 優しい人だった。

 僕は兄を
 とても尊敬していたし
 大好きだった。
 
 けれど僕のまわりには
 もう兄の話しをできる
 人はいないんだ・・・。

 兄の母も大学のころに
 亡くなった。

 父の前では兄の話しは
 ちょっとね・・・。

 だから桐乎さんさえ
 よければ
 これから時間のあるときに
 兄の話しをしませんか。
 
 兄を偲びたいんです・・・。」



ひとしきり話し終えた

芹沢さんは

とても悲しい目をしていた。


「私も・・・
 今までの瑞城先生を
 知りたいです・・・。
 そして少し気持ちが
 落ち着いたら
 私の中の瑞城先生も
 よかったら聞いて下さい・・・。」



「もちろん。
 ありがとう桐乎さん。」


芹沢さんはおだやかに

微笑んでくれた。



私もおだやかに微笑んだ。



私の心に暖かい風が

優しく吹き込んだ

そんな気がした。
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