佳人な先生
ふとよみがえる記憶。


あのハンドタオル――


「あ、あの
 芹沢さん。」


泣き声になりながら

芹沢さんに話しかけた。


「ん?」


「瑞城先生の
 持ち物って・・・」


「あぁ。
 まだあるけど・・・。
 けど、申し訳ないけど
 形見はあげれないんだ。
 兄が君に何も残さない
 努力をしたのを
 尊重したいから・・・。」


「・・・返して
 欲しいんです。」



「え?」



「瑞城先生に初めて
 出会った時に
 ハンドタオルを
 貸したんです。
 瑞城先生はきっと
 まだ持っていると
 思うんです。」



「・・・・・
 わかりました。
 探してみます。」


「よろしくお願いします。」


私は芹沢さんに

頭を下げた。


そして2人で

神社のほうに戻り

屋台のならぶ道を

歩いた。


少し歩いたところで

芹沢さんが


「少し待ってて。」


って言って

少し先のワゴンのような

屋台へ走って行った。
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