佳人な先生

しばらくして

どこかの川の近くに

着いた。


車を止めて

２人で河川敷に降りた。


２人で立ったまま

川のせせらぎを聞いていた。


そして少しして

芹沢さんが川を見つめたまま

口を開いた。



「――僕と会うのは
　辛いですか？
　兄と似ている
　僕の顔を見るのは・・・」



私も川を見つめたまま

答える。


「いえ・・
　そうじゃなくて・・・
　芹沢さんを・・・
　瑞城先生の代わりに
　してしまいそうで
　怖いんです・・・。

　頭じゃ瑞城先生の
　代わりなんて誰も
　なれない！って
　思っているのに
　やっていることは
　代わりにしてしまってる。
　それはお互いのためにも
　よくないんです・・・。」




芹沢さんは私の方を

向いて言った。



「正直な人ですね。
　・・・僕は
　かまいませんよ。」


私も芹沢さんに

向き直る。


「・・・・。
　瑞城先生の代わりは
　誰にもできません。」


少し悲しそうに

微笑みながら芹沢さんは

続けた。


「兄が入院している間
　ある生徒の話しを
　ずっと聞いていました。
　わかりますよね。
　あなたのことです。

　僕は兄が見ていた
　あなたの話しを聞いて
　少なくとも好意を持ちました。
　
　そして実際にあなたに
　会って、僕はあなたが
　好きになりました。
　初めて会った気がしない
　ぐらいまでに
　兄に話しを聞いていて
　兄の話したとおりの人だと
　思いました。

　本当はもっとあなたの
　気持ちが落ち着いてから
　言おうと思っていたんだ
　けれど・・・」




「・・・・・。」



私をまっすぐ見つめる

芹沢さんと目を合わせて

いるのがつらくなって

下を向いた。