佳人な先生
すると

前の方の席で

女子生徒が1人

挙手をした。


「ん?
 なんだ冴木。(サエキ)」


冴木さんは立ち上がり

先生を見て言った。


「私はボロアパートでも
 かまいません。
 
 食事も質素でも
 物も買えなくても
 平気です。

 好きな人と一緒に
 過ごせれば
 それでいいです。」


「そうか。
 じゃあ質問を変えよう。
 
 お前はその好きなやつと
 デートはしたくないのか?

 デートするにも金はかかる。」



「一緒に過ごせるなら
 それでいいです。
 お金のかからない
 とこだってあります。
 
 私は最低限の生活で
 一緒にいれればそれでいいです。」



「そうか。
 じゃあ時間はどうだ?
 
 今、勉強して
 いい大学に行って
 一流の企業に行けば
 労働条件がいい。

 週休2日は当たり前。
 申請すれば権利として
 有休はすんなり取れる。
 それに産休に育児休暇。
 保証も充実だ。
 給料の基準も高いし
 ボーナスだって
 ちゃんと出る。

 かたや
 今、勉強せずに
 すぐにその辺の
 企業に就職して
 その最低限の生活
 とやらの為に
 朝から晩まで働いて
 休みもないぐらいに働いて
 それでも
 一流企業の給料には
 到底およばない給料をもらう。
 有休やら保証なんて
 ほとんどありもしない。
 ボーナスすら出ないだろう。
 
 デートもできなけりゃあ
 生活するだけで
 いっぱいいっぱいの金だ。
 体を壊したと休めば
 すぐお払い箱だ。

 そしたら2人で働くか?
 そして2人で朝から晩まで
 働くか。
 家で2人で過ごす時間すら
 ないんじゃないか?
 帰ってきて2人で疲れて
 寝るだけだ。
 そしてまた朝も早くから
 2人で仕事だ。
 どこに2人で過ごす
 幸せな時間なんて
 あるんだろうなぁ。
  
 なぁ、冴木。」



「・・・・・。」


冴木さんは何も言わず

席に着いた。

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