佳人な先生
月冴さんは車を

走らせながら

話し始めた。


「僕と兄は
 本当に似てるでしょ。」


「はい。」


「双子でもないのに
 ほんとよく似てると
 言われて育ったんだ。
 
 趣味の読書や服の好みも
 一緒でね。

 けど、兄のほうが
 頭がよくてね。
 機転がきくというか・・。
 同じ外見なのに
 兄のほうが人として
 余裕があったように
 感じた・・・。

 正直うらやましくも
 あったし、憧れもあった。
 今でも尊敬してるんだ。

 本当にすばらしい
 兄だったんだ。

 ・・・・・。」



「月冴さん?」


月冴さんを見ると

涙を流していた。


月冴さんのキレイな

横顔に光る

涙・・・・。



極上の涙・・・。



いつの日にか見た

あの涙と同じ・・・。



私はこの顔に

弱いらしい・・・。



「止めて下さい。」


月冴さんは

静かに路肩へ車を寄せ

車を停車させた。


「ごめん。」


そう言って涙を

ぬぐう月冴さんを

私は引き寄せて

抱きしめた。


お互いのシートベルトが

邪魔をして

うまく抱きしめられないけれど


精一杯


月冴さんを私の胸に

抱きしめた。



月冴さんは少しだけ離れて

自分のシートベルトをはずし、

私のシートベルトもはずして

もう一度私の胸に頭を

預けてきた。



私もそれを受け入れるように

しっかりと抱きしめた。



月冴さんもまだ

つらいんだね・・・。



私と一緒だね・・・。
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