佳人な先生

「さっきはごめんね。
 なんか恥ずかしいとこ
 見せちゃって・・・。」


一通り食事が済んで

ゆっくり食後のお茶を

飲んでいると

月冴さんが言った。


「いえ・・・。
 月冴さんも
 まだつらいんですね。」



「・・・・。」


月冴さんは私から

目線をはずし

少し下を向いた。


「私、高校の入学式の日に
 たまたま見上げた校舎で
 外を見ながら涙を流す
 瑞城先生を見ました。
 
 とてもキレイな涙で・・・。
 
 あの涙を見て
 私は自分の恋心を
 認識したんです。
 ほとんど一目ぼれですね。

 現に私は瑞城先生のことを
 何も知らない・・・。」



「けれど、兄の手紙にも
 書いてあったように
 兄も星音ちゃんのことが
 好きだった。
 それは事実だ。
 相手の情報をどれだけ
 知っているのかは
 そう重要なことでは
 ないと僕は思うよ。」



「・・手紙・・
 読んでたんですね・・。」



「あ・・ごめん。
 封があいていて・・
 その・・・ごめん・・。」



「あ!いえ!
 責めたわけないんです・・。」



「けど、人としてよくないよね。
 ほんと、ごめん・・・。
 ・・・正直に言うと
 僕は兄が残す星音ちゃんへの
 言葉が気になったんだ・・・。
 もしかしたら僕は
 すでにその時にはもう
 まだ見ぬ星音ちゃんに恋を
 していたのかもしれない・・・。」



切なそうに話す

月冴さんに

私は何も答えることが

できなかった。


自分の気持ちさえ

はっきりしていないのに

月冴さんに

どう答えればよいのか

わからなかったから・・・。
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