佳人な先生
雷が近くに落ちたような
轟音を立てた。
私は気にすることなく
勉強をしていた。
「・・・怖くないのか。」
瑞城先生が手元の
教科書を見ながら
ポツリと言った。
「え?」
少しビックリして
顔を上げた。
「雷だ。」
瑞城先生は目線を教科書から
上げずに言った。
私には今の瑞城先生の方が
よっぽど怖い・・・
なんて言えるはずもなく・・
「雷は好きです。
雨を連れて来てくれますから。」
私は窓に目線を
移しながら答えた。
「そうか。」
瑞城先生が教科書から
目線をはずし窓を見た。
「はい。
雨の音が好きなんです。
また雨が降りそうですね。」
私は窓を見たまま言った。
「そうだな。」
瑞城先生も窓を見ながら
答えた。
在学中、後にも先にも
瑞城先生と雑談をしたのは
これだけだったな・・・
結局私は
文化祭のことを
瑞城先生に話せなかった。
せっかく瑞城先生と
雨の話しをした雰囲気を
壊したくなかったから・・・