君が教えてくれたのは、たくさんの奇跡でした。
そんな環境で育ったせいか、俺達はいつしか、大人の顔色ばかりを伺う人間になってしまっていた。



藪内は大きな家で、親戚は会社を設立させたりと、とにかく色んなことをしている。



従姉の遙香が、ヤブウチ製菓の社長になることは、遙香が生まれる前から決まっていたことで、生まれるのが男であろうと女であろうと、必ず藪内の血が流れた者が引き継がなければならない。



俺は、そんな息苦しい世界にいるのが嫌だった。



いつか、母さんと兄貴と家を出てやる。幼いながらに、そう思っていた。






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