龍太郎一味のご無体な学園生活
「本当は…いらない人間…必要ない人間などいないのです…」

中庭の花壇を見つめながら小岩井は言う。

「どんな人間でも…何かしら使命を持って生まれてきています…使命というと大袈裟に聞こえるかもしれませんが…何か仕事に就いて社会の為に働く事、大切な人の為に食事を作ってあげる事、おどけて誰かを笑わせてあげる事…それだって立派な使命です…」

「……」

龍太郎は黙って聞いている。

「その使命を果たす為に生まれてきた人間は、使命とは関係ない能力には優れていない…不得意な事をこき下ろして否定する人は、その人の使命ではない事を否定しているに過ぎません…その人の価値とは関係のない部分です」

小岩井は真っ直ぐに龍太郎を見る。

「残念ながら世の中は…使命だけを果たしていられるほど簡単ではない…生きていく為に…生活する為に…使命とは関係ない事もしなければならない…その過程で、不得手な事もしなければならない事もある…この世界は…もっと物質的な豊かさよりも心や精神の豊かさに目を向けるべきかもしれませんね…お金儲けや便利さを追求するあまり、人の心を蔑ろにして目まぐるしい速さで変化しすぎている…その変化の速さについていけず、心に苦痛を感じている人だっているというのに…」

< 305 / 2,031 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop